仮想通貨~新たな概念・技術ができている過程を見られる機会〜
今回は、最近興味を持っている仮想通貨にいま何が起きているのかについて書いてみたいと思います。
※概念については前記事を参照してください。
ビットコイン(BTC)価格の急変動
「1万BTC=ピザ1枚」というところからスタートし、昨年末には「1BTC=約230万円」まで高騰したビットコイン。
街にはビットコイン投資を勧める広告が溢れ、このまま上昇していくと思われていましたが、2月始めに突如 約65万円まで下落しました。現在はそこから徐々に戻し、110万円代となっています。
ビットコインは仮想通貨という概念を広めた点で大きな先行者利益を持っており、他の仮想通貨の値動きにも影響を与える代表的な存在として未だに君臨しています。
※一方で、ビットコインの弱点(手数料の高さ・送金速度など)を改良した仮想通貨も多く出てきているので、“ビットコイン信者”には注意が必要です。
(出典:bitflyer)
価格下落の原因
価格の下落には様々な要素が関係しているとされていますが、主に挙げられるのが「政府による規制」です。
これまでに、中国政府やインド政府は自国通貨からの資金流出を懸念し、取引・マイニングの禁止(中国)や決済利用排除(インド)など仮想通貨に厳しい姿勢を見せ、大幅な下落に繋がりました。
一方で、韓国政府は今年1月に「取引所閉鎖を検討している」と発表しました(その後に下落)が、最終的に「本人確認をした上で、国内での仮想通貨取引所の営業を認める」(2月14日)と方針転換し、国によって対応が異なることを示しました。
非中央集権のシステムを目指しているはずのビットコインですが、未だ中央集権システム(政府)の一挙手一投足に影響を受けているのが現状です。反面、前向きな規制によって、普及のための土壌が徐々に整備されているのも事実です。
3月にはG20でビットコイン規制について議論される予定で、これによってビットコイン(仮想通貨)と国家のパワーバランスがどう変化するのかには要注目です。
(出典:Steemit)
これ以外にも、「コインチェック問題」や「Tether問題」など、仮想通貨を扱う会社の管理体制が要因となった下落もあるので、注意しておく必要があります。(リンク先の記事参照)
仮想通貨淘汰の時代
仮想通貨は一般的に「仮想通貨=ビットコイン」という認識で広まっていますが、ビットコイン以外にも1500種類以上あると言われています。
しかし、その中で仮想通貨が価値を増大させていくには、一定の需要や流動性を確保していかなければなりません。
そのため、最近は「自分たちが普及すると信じている通貨をどんどん使ってもらおう」という動きが加速しています。
ビットコイン:ネットショッピング・家電量販店・飲食店での決済利用(参考:ビットコインが使えるお店100選)
イーサリアム:ICO利用・ゲーム内での利用(参考:メタップスICO・イーサエモン)
複数の通貨:ネット上の決済利用(参考:「コインベースコマース」[HPに簡単に埋め込める決済ボタン])
このような動きが進行していることは、「無数にあった仮想通貨の淘汰の始まり」を意味しています。
今後どの種が生き残るかは、「仕組みの独自性・開発メンバーの改善速度・取扱数や提携数の多さ」等をよくチェックして見分けていくべきだと思います。
※最近は、一発逆転を謳った仮想通貨詐欺・ICO詐欺が続出しているらしいので、発行主体を入念に調べることが必要です。
(出典:仮想通貨のやさしい始め方)
また、このような種の淘汰が始まると、仮想通貨の取扱種類が多い取引所・販売所ほどリスクが高くなってくることも忘れてはなりません。
※実際、コインチェックは他の取引所よりも多くの仮想通貨を取り扱って利益を上げましたが、セキュリティチェック等の対応が追いつかず今回の問題に至っています。
まとめ
これまで読んで、「今はまだ怖い」と思った人は手を出さない方がいいと思います。
※正直、無理矢理に自分推しの仮想通貨を勧めてくる人とは関係を考えたほうがいいと思います。
一方で、実際に身銭を投資してみることが情報をより知ろうと思うきっかけになり、理解への最短ルートになるとは思うので、「仮想通貨もっと知りたいな」「少額ならいいかな」と思った人は始めてみることをオススメします。
※どこで始めるかは、「運営会社の規模」や「取引所と販売所の違い」をおさえて選ぶことをオススメします。
新しい技術は完璧な状態で突如として現れるものではありません。今使っているインターネット技術も、ITバブルを経て形づくられてきました。
仮想通貨もまさにスクラップ&ビルドを繰り返して概念・技術が構築されている最中です。
どちらに転んでも遭遇することが少ない歴史に残りそうな出来事なので、片足を突っ込んで今後も見ていこうと思います。
ビットコイン~“投機”と見るか、“変革”と見るか~
(出典:Amazon)
昨年、多くのメディアで取り上げられ話題となった『サピエンス全史』。
「人類が繁栄したカギは、フィクションを信じる力だ」とし、国家・宗教などは虚構であると提示した。
その虚構の中の一つに「お金」がある。
(出典:ISTOCK/MATTHIASHAAS)
現在は各国家の中央銀行が紙幣や硬貨を発行し、「これには~円の価値がある」決めたものが世界中で使われている。
しかし、前書の主張をもとに改めて考えると、これは「“国家”というフィクションの上に成り立っているフィクションである」と気付かされる。
現在の中央銀行制度の歴史は意外に短く、1844年のイングランド銀行から約170年しかない。それ以前は金・銀などの有限な物が価値を持ち、その調達コストが価値の基本となっていた。
そんな金・銀に回帰した性質をもつのが、最近話題の「ビットコイン」である。
(出典:GIGAZINE)
ビットコインには中央管理する機関はなく、「ブロックチェーン技術」によって分散して管理する仕組みがとられ、現在のような国家による流通量の調整は行われず、決まった総量の中で需要によって上下するようになっている。
また、「マイニング」と呼ばれる作業(取引記録の台帳への記入)をやってもらうことで、関わる人が増えれば増えるほど価値が上がるというシステムにし、通貨が価値を持つために必要な「多くの人の”信用”」を得た。
これによって、最初は「1万ビットコイン=ピザ1枚」という価値であったものが、「1ビットコイン=約40万円」までになったのである。
(出典:Bitcoin.com)
これまでマイニングは中国企業が6割以上を占めていた。
しかし、最近になって「自国通貨からの資金流出」「マネ―ロンダリングや不正なICO」を恐れた中国政府が取り締まりを始め、「9月末で全取引停止・閉鎖へ」「P2Pも禁止へ」などの変化が起きている。
他にも、英国金融規制当局が「ICO投資 に『全損の覚悟を』と警告」したり、
欧州中央銀行の副総裁が「ビットコインは通貨ではない、チューリップだ」と発言したりと、既存勢力が厳しい姿勢を見せている。
そんな中、既存勢力に含まれるJPモルガンのCEOが「ビットコインは詐欺、取引を行えば即解雇する」と発言した後、価格が落ちたところでJPモルガンがビットコインを購入するという動きもあった。相場操縦との疑いもあるが、金融業界がビットコインに注目し始めていることを示す一事例となった。
(出典:Slayement)
ビットコインは多くの人から一過性の 「投機商品」として捉えられている。
しかし同時に、貧困層で銀行口座をもたない人や銀行が周りにないような人にとっては非常に貴重なツールにもなりうる。
どちらの見方もできるが、
「国家 vs グローバル企業」という構図も 見られる現代においては、後者のように「変革を伴う新たな一歩」として見る方が世界を面白く見ることができるのではないだろうか。
※TBSラジオ「荻上チキ・Session-22 2017年9月11日放送分」一部参照
『三度目の殺人』~“達観にも似た諦観”に向き合う一作~
前作『海よりもまだ深く』でホームドラマに区切りをつけ、最初の作品となった『三度目の殺人』。
これまでのホームドラマで磨かれた「人物のデッサン力」と、是枝監督の出自であるドキュメンタリーで鍛えられた「社会問題を深掘りする力」が合わさった非常に見応えのある作品だった。
● 脚本
本作は、「司法」に対して多くの人が持つ「そういうもんだろう」という“達観にも似た諦観”に真正面から向き合っており、
主人公の重盛(福山雅治)と同じく、自分の中で“正しい”と思っていたことが次々と揺らいでいった。
・裁判は誰のために、何のために
弁護士である重盛は三隅(役所広司)のために、量刑を軽くするためのストーリー[嘘]をつくり上げていく。しかし、三隅の証言が次々と変わり、重盛は自分の作り上げたものと食い違うことに苛立ちを覚える。
そして、被告人のために闘っているはずの弁護士が「真実なんてどうでもいい」と口走る。
物語の終盤、「自白をしたら楽になると言われた。本当は殺していない。」という三隅の言葉を信じ、重盛は主張を変更する。
それに対し、正義の下に人を裁くはずの裁判長が「訴訟経済がねぇ」と口をつく。
「被告人のため」「正義のため」と言いながら、結局は「自分の地位や名声のため」に動いているという、司法の実態を改めて見せられ閉口してしまった。
またそこに、「真実のため」と言いながら、「被害者の妻と犯人が共謀?」という読者受けのいいつくり上げられたストーリーを伝えるメディアも重なって見えた。
・“正義”とは
世の中の多くの人は、見て見ぬふりをして生きている。
しかし、三隅はそれができずに正義を貫いて生きてきた。そして刑務所という籠から一度は出たが、「食品偽装」という嘘をついた工場長を裁かずにはいられなかった。
一見すると自己正義で人を殺した犯罪者だが、裁判官が判決を下して人を殺す「死刑」と比べた時に、三隅の行為を躊躇なく非難できるだろうか?
「法治国家だからダメだ」ということを、司法の実態を見ても言えるのだろうか?
日本人が長い間、目を逸らしてきた死刑制度について、ここで向き合わされた。
・複雑な絡み合い
親子は嫌なところも似るものである。
これまでの是枝監督のホームドラマでも共通して描かれてきたこの点が、
今回も「万引きした相手に弁護士として慣れたように謝る父・思いのままに涙を流せる娘(蒔田彩珠)」などで見られた。
これによって、工場長が家族を養うため・前科持ちを雇うために「食品偽装」という嘘をついたとすれば、
娘である咲江の「父親にレイプされた」という証言も三隅を救うためについた嘘なのではないか、という考えに至る。
また、重盛の娘が万引きした際に見せた嘘の涙が、事務所を去る際に見せた咲江の涙に疑いを持たせる。
色んな描写が絡み合い、何が事実か分からぬまま映画は終わっていった。
●撮影
今回は『そして父になる』『海街diary』でも撮影監督を務めた瀧本幹也さんとの再タッグということもあり、各場面とも“光”が非常に印象的だった。
特に、法廷は日本の作品でよく見られる閉鎖的なものではなく、『そして父になる』と同様に光が差し込んでいる法廷であったのが、陰陽を感じさせていた。
加えて、接見室でのやり取りのシーンで、ガラスの反射を使って重盛と三隅が被っていくというカットは圧巻だった。
また、今回は顔に寄った画が多く、役者陣の“目の演技”が光っていた。
重盛の真っ直ぐな目、三隅の空虚な目、咲江の怒りと諦めの目…など、セリフがないシーンでも意味を感じさせるモノが多くあった。
一度目を見終わって「三度目の殺人とは何を意味するのか?」「十字架のモチーフは他にもあるのか?」等、まだまだモヤモヤするところが多く残っているため、
二度・三度と見てこの映画の味を更に噛みしめたい。
※追記
<新たに気づいたこと>
・裁判の最後、三隅が咲江の前で鳥を放すジェスチャーをしていた
・「カナリアが入った籠」と「刑務所」・「三隅が1匹だけ離す行為」と「重盛の父が死刑を下さなかったこと」(命を弄ぶ)のリンク
・「接見室」と教会の「懺悔室」とのリンク
<ティーチイン>
Q.映画の中で重盛は大きくブレていたが、是枝監督自身の考え方もブレたか?
A.実際に弁護士の方にロールプレイングをしてもらう中で、自分がいかに裁判を情緒的に捉えているかを感じた。その度に脚本を書き直したが、企画自体の着地点は役所さんに書いた手紙の内容と同じになったと思う。
Q.これまでの映画と違い、食事のシーンにこだわりがなかったのはなぜか?
A.弁護士という職業柄、食へのこだわりはないと考えて牛丼などの簡単に済ませることができる食事を選んだ。
ちなみに、お父さんは退職したのでイタリアンにハマったり、ニットの服を着たりするようになったという設定にした。
<関連記事> ※本文はこれらを読む前に書きました
『セブンルール』~4人が真摯に向き合う密着ドキュメンタリー番組~
「こんな職業があるとは」「世の中、色んな人がいるなぁ」等、自分が普段見ている世界と違う世界を見せてくれる、密着ドキュメンタリー番組。
そんな密着ドキュメンタリー番組界は最近、
『情熱大陸』『プロフェッショナル仕事の流儀』『アナザースカイ』『家、ついて行ってイイですか?』『YOUは何しに日本へ?』等々、群雄割拠の時代である。
(出典:『セブンルール』)
そんな中で異彩を放っている番組が、様々な分野で活躍する女性たちの人物像を“7つのルール”から映し出す密着ドキュメンタリー番組、『セブンルール』
この番組が際立っていると思う要因、それは「4人(本谷有希子・YOU・若林正恭・青木崇高)がとにかく“真摯”であること」だ。
それが最も表れていた回が、「エッセイスト 下田美咲」の回だった。
(出典:『セブンルール』エッセイスト・下田美咲)
自分の全てをネタとして作品にしてきた下田。そんな彼女は現在の妊婦であることもネタとして書いている。
下田「妊婦ならではの文章を書いて売っていかないと妊婦になったことによって失速しちゃうから」
下田「失速を避けるためには妊婦を売るしかない」
この言葉に対して4人でのやり取りが始まる。
青木「売りにしなきゃいけないかなぁ」
本谷「子供もつ時に、なんか…面白くなくなる感じはした。自分が。」
青木「若林さん、(下田さんのこと)好きですか?」
若林「好きとかとはまた別の気持ちだなぁと思ってて。面白いと思う。」
YOU「(青木くんは)ちょっと苦手かな?」
青木「僕はそうですね~」
多くの密着ドキュメンタリー番組は密着対象がカッコよく演出されており、見ている側は「これが一流か」「見習わなければ」という考え方に囚われる。ましてやスタジオで見ている人たちの意見は肯定ありきであることも少なくない。
しかし、この番組にはそれがない。全肯定という縛りなく4人が真摯に向き合い、自分が合うと思うものは合う、合わないものは合わないとハッキリと言ってくれる。
これこそが『セブンルール』最大の魅力である。
『ひよっこ』~日常の豊かさを感じさせる朝ドラ~
最近、毎日を楽しみにしてくれている 連続テレビ小説『ひよっこ』(脚本:岡田惠和)
3作品続いた「時代に翻弄される成功者物語」とは違う、「その時代を生きていた市井の人々の物語」をじっくり描くというのがこの作品の軸となっている。
(これは、昨年大ヒットした『この世界の片隅に』とも共通したものを感じる)
第11週「あかね荘にようこそ!」6月16日(金)の回は、そんな『ひよっこ』の良さがよく分かる回であった。
はい、バーグあがった! たまってるぞ。早く持ってけ!
日常でよくある焦りからくる“怒り”。そんな“怒り”を受けた側もやり返してしまい、「怒りの連鎖」が起きる。
俺もさ、気をつけてはいるけど、忙しいと、ついこう声が大きくなって。「はい、持ってけ」 とか。そういうのほら、高ちゃんとかはあれだけど、みね子はひょっとしたら怖がってんのかなと思って。
省吾(佐々木蔵之介)は修行していたレストランや軍隊で辛いと感じていたことを、みね子(有村架純)にも感じさせてしまったのではないかと後悔していた。
普段見過ごしてしまいがちなことに「他者への想像力」を働かせ、一歩立ち止まって考えてみる。これは、みね子の語りでもよく見られる。
ここには大勢の乙女たちがいました。みんなそれぞれに、私とおんなじように物語があります。なんだかそれって、すごいなぁと思います。そんな物語が、ものすっごくたくさんあるのが、東京なのかなぁって思いました
今まで考えもしなかったけど、食べ物屋さんが並ぶ商店街の裏には、こんな工場が日本中にあるんだなぁと思ったら、なんだか楽しくなります
そんな相通じる部分もあり、みね子はすずふり亭で楽しくやれているのかもしれない。そのように感じた。
こんな、日常のちょっとした出来事・違和感を逃さずに描き、積み重ねていく。
これが『ひよっこ』の魅力だと思う。
(出典:5分で『ひよっこ』第10週~谷田部みね子ワン、入ります)
ちなみにこの後、高子(佐藤仁美)が
高ちゃんとかはあれだけど
という省吾の言葉に対して、
でも、まぁ、あれですよねえ。
とやり返し、
料理があがってなかなか運べない時、 「早く持っていけ」って言われると、 ちょっと、腹が立ちますよね。
まぁでも、軽~く復讐させて頂いてます。
と先ほどまでのイイ話と真逆の発言をしながらも、みんな笑っていた。
それもまた日常。
「青い炎」というブログ
「情報の波に飲み込まれかけている。」
(出典:富嶽三十六景)
2017年も半年が過ぎたある日、ふとそのように感じ、情報を整理しながら発信してみようとブログを始めることにした。
正直、「日記も一度もつけたことのない自分に続けられるのか?」「周りの良ブログと同じ土俵に立っていいのか?」など不安は尽きなかったが、「溺れる前にとにかくもがいてみよう」と思い至った。
ブログタイトルは『青い炎』にした。
これは「普段周りに熱くは語れないが、内で静かに燃えている事について書いていこう」と思ったからだ。(最近ドラマ化されたあの漫画から拝借したわけではない)
内容はテレビ・ラジオ・映画についてが中心になるとは思うが、特にジャンルを決めずその時々で気になったことを書いてみようと思う。
どうか続けていけますように。