ビットコイン~“投機”と見るか、“変革”と見るか~
(出典:Amazon)
昨年、多くのメディアで取り上げられ話題となった『サピエンス全史』。
「人類が繁栄したカギは、フィクションを信じる力だ」とし、国家・宗教などは虚構であると提示した。
その虚構の中の一つに「お金」がある。
(出典:ISTOCK/MATTHIASHAAS)
現在は各国家の中央銀行が紙幣や硬貨を発行し、「これには~円の価値がある」決めたものが世界中で使われている。
しかし、前書の主張をもとに改めて考えると、これは「“国家”というフィクションの上に成り立っているフィクションである」と気付かされる。
現在の中央銀行制度の歴史は意外に短く、1844年のイングランド銀行から約170年しかない。それ以前は金・銀などの有限な物が価値を持ち、その調達コストが価値の基本となっていた。
そんな金・銀に回帰した性質をもつのが、最近話題の「ビットコイン」である。
(出典:GIGAZINE)
ビットコインには中央管理する機関はなく、「ブロックチェーン技術」によって分散して管理する仕組みがとられ、現在のような国家による流通量の調整は行われず、決まった総量の中で需要によって上下するようになっている。
また、「マイニング」と呼ばれる作業(取引記録の台帳への記入)をやってもらうことで、関わる人が増えれば増えるほど価値が上がるというシステムにし、通貨が価値を持つために必要な「多くの人の”信用”」を得た。
これによって、最初は「1万ビットコイン=ピザ1枚」という価値であったものが、「1ビットコイン=約40万円」までになったのである。
(出典:Bitcoin.com)
これまでマイニングは中国企業が6割以上を占めていた。
しかし、最近になって「自国通貨からの資金流出」「マネ―ロンダリングや不正なICO」を恐れた中国政府が取り締まりを始め、「9月末で全取引停止・閉鎖へ」「P2Pも禁止へ」などの変化が起きている。
他にも、英国金融規制当局が「ICO投資 に『全損の覚悟を』と警告」したり、
欧州中央銀行の副総裁が「ビットコインは通貨ではない、チューリップだ」と発言したりと、既存勢力が厳しい姿勢を見せている。
そんな中、既存勢力に含まれるJPモルガンのCEOが「ビットコインは詐欺、取引を行えば即解雇する」と発言した後、価格が落ちたところでJPモルガンがビットコインを購入するという動きもあった。相場操縦との疑いもあるが、金融業界がビットコインに注目し始めていることを示す一事例となった。
(出典:Slayement)
ビットコインは多くの人から一過性の 「投機商品」として捉えられている。
しかし同時に、貧困層で銀行口座をもたない人や銀行が周りにないような人にとっては非常に貴重なツールにもなりうる。
どちらの見方もできるが、
「国家 vs グローバル企業」という構図も 見られる現代においては、後者のように「変革を伴う新たな一歩」として見る方が世界を面白く見ることができるのではないだろうか。
※TBSラジオ「荻上チキ・Session-22 2017年9月11日放送分」一部参照